未完クリエイターズファイルNO.1「ゲームクリエイター 斗ライ」

  未完の作品を抱えた方に、創作活動に関するインタビューを実施する「未完クリエイターズファイル」。第一回目は、ゲームクリエイターの「斗ライ」さんにお話をうかがいました。

 どのように創作を始めたのか、どうしてゲームは完成しなかったのか、今後どのような活動をしていきたいか について掘り下げていきます。

 

斗ライ (Twitter @SyoxtuKanGayoI)

大学1年生。これまでに作ったゲームは5つ。そのうち未完の作品は3つ。3つとも高校のときに作っていた。入学前には勉強も、部活も、ゲーム制作も、どれもおろそかにせず頑張ろうと思っていたのだが……。

 

未完のゲーム紹介

 

1.夢現(ゆめうつつ)

高校1年生の時作っていたRPG。たしか、突然眠ってしまう病が流行した世界が舞台。寝ている人の夢の中を冒険する。主人公たちの魔法や必殺技をカスタマイズできることがウリで、自分だけの技を作り上げ、主人公たちを鍛えていき、最後にはそのコピーが立ちはだかるという筋書きだった。

 カスタマイズでは技のダメージ量、属性などをプレイヤー自ら設定できる。レベルアップするごとにポイントがたまり、より強い技を作れるようになるシステムだった。

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しかし、技発動時のエフェクトや、追加効果など設定が次第に煩雑になっていく。そのほかにも思い付きでどんどん要素を追加していった結果、ちょっとシステムを追加するために大幅に後戻りする必要が生まれるなど、汚く、拡張性がないゲームになってしまい、開発しづらくなっていった。

 

ポイント→強力な発想力を持つがために、作りながらもどんどんわいてくるアイデアによって苦しめられているパターンです。妥協はしたくない。しかし手が追い付かない。この辺りが一人でゲームを作ることの難しさかもしれません。

2.綻び

高校2年生の時作っていたアクションゲーム。ある自作ゲームのコンテストで、友達がアクションゲームをつくって入賞した。それに触発されて、せっかくだから自分もコンテストに応募するつもりで作り始めた。

体が磁石になってしまった主人公が、剣や鉄球を体にくっつけて身を守ったり、反発させて発射して攻撃したりしながら先に進み、元の体を取り戻すというストーリー。

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夢現」の反省を生かして、先のことを考えながら作っていたが、敵を狙うシステムが面倒なことや、技を使うたびにメニュー画面を開く必要があることなどによって、アクションゲームとしてのテンポが悪くなり、なかなか納得のできるものが作れなかった。

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また、磁石の性質をできるかぎりリアルに近づけようとしたことが原因でバグが頻発。こだわりすぎてやはり複雑になっていった。

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そうこうしているうちにコンテストの応募の締め切りが近づいてきて、間に合わせるために別のゲームを開発することに。

3.ラスボスラッシュ

「綻び」の代わりに作ったRPG。コンテストに応募することを目標に急いで開発していた。様々な世界の「ラスボス的な奴」を倒していくゲーム。結局コンテストには間に合わず、そのまま受験対策の期間に突入。受験が終わった後にはモチベーションが全くなくなっていた。

高校の3年間では一つもゲームを完成させることができなかった。

 

ポイント→回避しがたいイベントによって中断された作業がそのまま立ち消えになっていく、ということもあるようです。特に進学校では、受験が半ば第一目標のような共通認識を与えられていて、ある時期を境にとても趣味に時間を割いている暇なんてない、という空気になったりします

 

今後の展望

ゲーム制作への意欲は強い。情報系の学科に進んだこともあって、高校時代よりは高度なものに挑戦できそうだ。

これまで使っていたツールではなく、「Unity」というツールを使えるように勉強中。自分の創作の動機の一つは、多くの人に自分を知ってもらうことだ。スマホアプリ開発にも対応できるUnityをマスターし、スマホゲームを作りたい。無料公開して多くの人に見てもらいたい。

また、大学に入ってから、ゲーム制作をやっていたという同級生と知り合った。ゲーム制作サークルのようなものを作るのもいいかな、とも思っている。

 

 

 ゲーム制作には、様々な能力が必要です。斬新なゲームシステムを生み出す発想力。魅力的なシナリオを紡ぐ文章力。それらを一つにまとめる技術力などなど。インディーズゲームが身近となって久しく、開発へのハードルは以前より低くなっているのですが、自力でゲームを完成させることの魅力も手間も、依然として変わっていないようです。高校生が一人で成し遂げるには、相当な気力が必要なのでしょう。

 斗ライさんは大学生になったことで、受験という回避困難なイベントから解放されました。また、情報系に進んだことで、学業と趣味が融合し始めました。環境はずいぶんと整ったようです。これから彼がどのような道を歩むのか、目が離せません。

  

 

 

このコーナーでは、未完の作品を抱えたクリエイターを募集しています。

小説、ゲーム、漫画、脚本などなど、分野は問いません。

なにかを完成させ、発表するまで、ふつうは誰も見てくれません。しかし、そういう孤独がモチベーション低下につながっている、ということもあると思います。

未だ道半ばのあなたの過去、今、そして未来について、ここで話してみませんか?

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