「無題」 タピ吸い 

こんにちは、趣味でタピ吸いを嗜む者です。第n-1次タピオカブームと第n次タピオカブームの合間でその魅力に取り憑かれ、にもかかわらず、世間の波に追いつかれ追い越された結果、ただのミーハーな奴認定を受けるに堕した悲しき生命体。それが私たちであります。一番流行りに疎いタイプなのにね。「ぽっと出の奴らとは違うのに!」という思いに縛られながら、悲しきかな今日も黒い粒が底に溜まった液体を吸い込む……。うるせえ、そんな奴はいません。そんなカスみたいな自意識はタピオカにして吸い込んじゃいなさい。出口が見えないのでここらへんでやめようと思います。もう夜遅いですし起きてから続きを書きますね。おやすみなさい。

 

おはようございます。

早速ですが、私のペンネームは昨日お伝えしたとおりタピ吸いでお願いします。略しちゃった。好きなタピオカ飲料はタピオカココナッツミルクです。当然ですね。ここまで読んで「さっむ……」と思ってページを閉じようとしたあなた、止めません。いい一日を。健康はラジオ体操から。こっちも書いていて寒気がしているのでお愛子様です。すげえ誤字だな、直さなくていいですか?

はい、戻りまーす。一応この文体で書いているのにも後付けですがきちんとした理由があり、読者には本当に同情します。読みにくくてたまんねえぜ。普段もそこそこの頻度で文章を書いているのですが、こういった文体で書くことは滅多になく、延々と一人でボケたりツッコんだりして読者を置き去りにするような、一切毒にも薬にもならない文章をやってみたくなったというのと、今回供養させていただく文章が今書いているこの文章よりもずっとサムいものに仕上がっているので耐性をつけてほしいという意図があります。前者と後者との比率は9:1くらいです。ちなみに文中で突然夜が明けるネタは受け売りです。矜持はねえのか。

さて、今回供養させていただく文章についてですが、私が高校3年生の、大学受験が終わった直後に書いたのではなかったかと記憶しています。もしかしたらご存知の方がいらっしゃるかもしれませんが、その当時「文章しか投稿できないSNS」というサービスがありました(今もおそらくありますが、過疎が進むばかりです)。

受験生であった私はそこに入り浸り、日々のストレスを見ず知らずの文章たちにぶつけ、ある時は画面の向こうの書き手の存在に勝手に救われたり、ささやかながら救ったりしたものでした。文章の力って本当にすごい。私の暗黒受験生時代を優しく照らしてくれたのは、間違いなくそれらの文章たちです。感謝してもしきれない。

その中で特に仲の良かった書き手は大学院生の方でした。当時は大学受験を終えたばかりで、大学とは一体どのような場所であるのか、そういったことに四六時中胸を膨らませるような純真な高校生でした。当然次に書く小説では「大学生活を描きたい」。純真ですね。

例の大学院生からは「大学を一切知らない人が描く大学を読んでみたい」というお声をいただきました。少しは調べろよ、という感じですが、面倒がった私はそのまま「私の中の大学はこんな感じだ!」というふわっとしたイメージのまま書き進めてしまったのでした。しくじりへの道まっしぐらですね。お手本みたいなしくじりです。その当然の帰結として、「わからんものは書けんわ!」と匙を投げられて放置された成れの果てが、下記の文章になります。かわいそう。

 

 

あの会話がなされたのはいつだったか。
僕の敬愛する友人、緑高貴が僕の前に相対し、僕の為に忠言し、僕の日々に顕現したのは。

雨の日に、大学構内のカフェテリアで、僕らは出会った。出会ったというよりも、その出会いは僕にとっては偶然で、緑にとっては必然だった。僕の座っていた目の前に突然現れた銀縁眼鏡のひょろ長い奴。それが緑だった。僕はその時ちょうどホットドッグに手をつけようとしていたような気がする。マスタードが好きで、特にこのカフェテリアのマスタードが好きだった。だから少なからず昼食を楽しみにしていた僕は、突然の来訪者に出鼻を挫かれた。初めて見る顔だったから、本当に困惑した。ここ一週間の生活を振り返って心当たりを手当たり次第探したりもした。無かった。いきなり他人が食事している席に座る、しかも目の前に座るなんて、僕には到底真似できない芸当だったので、その分印象が強かった。

「お前が、枝田黎か」

第一声はこれだった。僕は有名人なのだろうか。初対面の人間と話すときのお約束である、

「名前、何て読むんですか?……え、えだだ?」「えだです」

というやりとりをすっ飛ばし、しかも下の名前まで目の前の男は知っているのだ。えだ、れい。黎明の、れい。珍しいし、女の子みたいな名前だなと思ったこともあるが、自分自身はこの名前を気に入っている。

「そうですけど」

目の前の男は、それを聞くと頭を掻いた。ツヤのある長めの黒髪がわしゃわしゃ揺れる。ついでに眼鏡をくいっと直す。どうやら正面からでなく側面から眼鏡を直すタイプの眼鏡くんだ、とくだらないことを僕は思った。僕の今までに出会った人の中では、正面派が7割、側面派が3割だ。ヒーイズマイノリティ。

「そうか。俺は、緑高貴。名字が紫だったらもっとやんごとなかったのにな。突然話しかけて悪かった。びっくりさせたと思う。あー、そうだ。俺のことは高貴って呼んでくれて良い。よろしくな」

僕が枝田黎だと確定した途端めちゃくちゃ話し始めた。名字が紫、のくだりで少なからず自分に近いものを感じてしまったのが複雑だ。そして僕はまだあなたの名前しか知らない。一体何をよろしくされたのだ。

「はぁ……」

「そうか、お前がまほろの彼氏なのか。なるほどなぁ」

こいつ、勝手に話を進めていく。偏見だけれど理系っぽい。ちなみに僕は経済学部だ。きっと自分の思考回路は整然としているのだろうけれど、僕はその思考回路の途中で詰まって動けなくなってますよ、置いていってますよ高貴さん。そもそもまほろが何故ここで出てくる。こいつ、まほろの何なんだろう。いや、何だったのだろう、の方かもしれない。まほろは、ちょうど3日前に付き合い始めた可愛い女の子だ。

「……岐丸がどうかしましたか」

「あ、そうだよな。勝手に話を進めて悪かった。俺は、まほ……岐丸の幼馴染でな。いや!別に恋愛感情とかはない。昔からの付き合いで、兄妹みたいなものだ。それで、今日はまほ……岐丸をよろしくお願いしますっていうのと気をつけてくださいっていうのを言いに来たんだ」

「気をつけてくださいとは」

あー……と緑が頭を掻く。そしてついでに眼鏡を直す。どうやら癖のようだ。

「まぁ、その……なんだ。まほ……きま」「まほろでいいですよ」「そうか。その、な、まほろはめちゃくちゃ可愛いし、性格も良いし、最高だと思う。良い匂いするし」

匂いフェチか何かなのだろうか。

「ただ、まほろ自身は悪くないんだ。だけど、昔からまほろは誘引体質で。まだお前はまほろと付き合い始めて日が浅い。だからまだ何も起こっていないと思う。でも、頼むから気をつけてくれ。と言いたかったんだ。まほろが引き寄せる事件は、大事なものも、大したことないものも様々だが、とにかく巻き込まれるのは、本人じゃなくてまほろの周りにいる人たちだ。実際、まほろには前にも付き合っている人はいたが、まほろ自身の問題ではなくて、まほろと一緒にいるだけで色んなことが起こって疲れるからという理由で何回も別れ話を切り出されている––––」

緑が頭を下げた。

「お願いだから、まほろを守ってやってくれ。俺もできる限りのことはするから。今までは、事件に巻き込まれるのは俺の役目だった。俺が動き回って、まほろの人間関係なんかも守ってきた。俺はまほろの兄だから。でも––––」

まほろを守るのは兄だけでなく、彼氏の役目だから。と緑は言った。

これが、僕と緑との出会いであって、これがきっかけで僕は緑とよく会うようになった。正直、緑の言うまほろの誘引体質についてはこのときはまだ半信半疑だったし、唐突すぎて対応には困った。けれど、だからと言ってまほろへの思いは特に変わらなかった。
それから僕と緑はしばらく話し込んで、今までにまほろが引き寄せてきた事件と、その事件を穏便に解決するため、いかに緑が奔走してきたかの話を聞いた。なかなかにエクストリームだった。もし、緑から聞いたような事件が本当に僕の周りで起こり始めるのなら、僕の日常は一体どこへ向かおうとしているのだろうか。

「お前を最初見たとき、お前なら大丈夫そうだな、と思った。何が起こっても、それを普通のことにしてしまいそうな、そんな雰囲気を感じた。はっきり言って鈍そう」

「ばかにされてるのかな」

「褒めてるんだよ」

僕の大学生活は、ここでひとつの転機を迎えた。2回生の5月だった。僕は、これから待ち受けていた宝物のような毎日を、書き留めておこうと思い立った。多分、書き始めはこの日でよかったはずだ。緑と出会い、まほろの誘引体質のことを知った日。どこにでもありそうで、どこにもない僕の日常は、ここから始まった。

 

 

……はい。

惜しい! 全部惜しい!

やりたいことは、分かるけどな? という感じですね。

せっかくなので一個ずつ突っ込んでいくやつやりますか? 面白そうなので。でも、面白がっているのは私だけかもしれないので、回れ右するなら今ですよ。

それでも、このサムい自虐行為は最後までやり通さにゃならんのです。

この文章は、二度始まる。

 

あの会話がなされたのはいつだったか。
僕の敬愛する友人、緑高貴が僕の前に相対し、僕の為に忠言し、僕の日々に顕現したのは。

いやくどい! 西○維新を意識してそうですね。これは重症です。なんならそこまでドラマチックなシーンじゃないでしょう。仮にその緑くんが主人公の最大の敵だったらまだ良かったかもしれないですけどね。そのテンションで読み始めたらかなり拍子抜けすると思います。ちょっと使っている言葉もおかしいですね。はい……、このペースで全部行くからな。

雨の日に、大学構内のカフェテリアで、僕らは出会った。出会ったというよりも、その出会いは僕にとっては偶然で、緑にとっては必然だった。

素直に出会わんかい。その注釈は要らんのじゃ。これ以降、雨の描写一切関わってこないのウケますね。雨、要る? 雨降ってれば雰囲気出るだろ、みたいな安直な考えやめたほうがいいですよ。

僕の座っていた目の前に突然現れた銀縁眼鏡のひょろ長い奴。それが緑だった。僕はその時ちょうどホットドッグに手をつけようとしていたような気がする。マスタードが好きで、特にこのカフェテリアのマスタードが好きだった。

大学にそんなオシャレなもんは無い。いや、私立大学ならあるかもしれませんけどね。思えば、小説の中で描かれるキャンパスは皆華やかだな。あと、そのマスタードは絶対業務スーパーで買っているんだからそんな恥ずかしいこと言うのやめときなさい。

だから少なからず昼食を楽しみにしていた僕は、突然の来訪者に出鼻を挫かれた。初めて見る顔だったから、本当に困惑した。ここ一週間の生活を振り返って心当たりを手当たり次第探したりもした。無かった。いきなり他人が食事している席に座る、しかも目の前に座るなんて、僕には到底真似できない芸当だったので、その分印象が強かった。

ちょっと共感しちゃうな。自分で書いてるのだから当然なのですが……。

「お前が、枝田黎か」

第一声はこれだった。僕は有名人なのだろうか。初対面の人間と話すときのお約束である、

「名前、何て読むんですか?……え、えだだ?」「えだです」

というやりとりをすっ飛ばし、しかも下の名前まで目の前の男は知っているのだ。えだ、れい。黎明の、れい。珍しいし、女の子みたいな名前だなと思ったこともあるが、自分自身はこの名前を気に入っている。

「そうですけど」

目の前の男は、それを聞くと頭を掻いた。ツヤのある長めの黒髪がわしゃわしゃ揺れる。ついでに眼鏡をくいっと直す。どうやら正面からでなく側面から眼鏡を直すタイプの眼鏡くんだ、とくだらないことを僕は思った。僕の今までに出会った人の中では、正面派が7割、側面派が3割だ。ヒーイズマイノリティ。

ずっと鼻につくなこいつは。観察するな、仕分けるな、ラベルを貼るな。

「そうか。俺は、緑高貴。名字が紫だったらもっとやんごとなかったのにな。突然話しかけて悪かった。びっくりさせたと思う。あー、そうだ。俺のことは高貴って呼んでくれて良い。よろしくな」

お前もウザいんかい。やんごとなかった、とか中途半端な日本語を使うな。

僕が枝田黎だと確定した途端めちゃくちゃ話し始めた。名字が紫、のくだりで少なからず自分に近いものを感じてしまったのが複雑だ。そして僕はまだあなたの名前しか知らない。一体何をよろしくされたのだ。

複雑な気持ちになるんじゃねえ、自分を特別だと勘違いするな。そのとおり似た者同士だよお前らはよ。あとさっきから不要なメタ視点をちょくちょく入れてくるな。

「はぁ……」

「そうか、お前がまほろの彼氏なのか。なるほどなぁ」

ツッコミどころが多すぎて、ただツッコミがくどい奴みたいになっちゃってるのやめてください。最悪のボケに最悪のツッコミが重ねられ地獄が生まれている。

こいつ、勝手に話を進めていく。偏見だけれど理系っぽい。ちなみに僕は経済学部だ。きっと自分の思考回路は整然としているのだろうけれど、僕はその思考回路の途中で詰まって動けなくなってますよ、置いていってますよ高貴さん。そもそもまほろが何故ここで出てくる。こいつ、まほろの何なんだろう。いや、何だったのだろう、の方かもしれない。まほろは、ちょうど3日前に付き合い始めた可愛い女の子だ。

偏見すぎるだろ。あとそのラノベみたいな一人ツッコミやめなさい。全部ひとり語りの中で状況や登場人物の性格を説明しようとするのは全く芸がないですよ。あとまほろさんの説明雑だな。

「……岐丸がどうかしましたか」

「あ、そうだよな。勝手に話を進めて悪かった。俺は、まほ……岐丸の幼馴染でな。いや!別に恋愛感情とかはない。昔からの付き合いで、兄妹みたいなものだ。それで、今日はまほ……岐丸をよろしくお願いしますっていうのと気をつけてくださいっていうのを言いに来たんだ」

過保護か。

「気をつけてくださいとは」

あー……と緑が頭を掻く。そしてついでに眼鏡を直す。どうやら癖のようだ。

「まぁ、その……なんだ。まほ……きま」「まほろでいいですよ」「そうか。その、な、まほろはめちゃくちゃ可愛いし、性格も良いし、最高だと思う。良い匂いするし」

匂いフェチか何かなのだろうか。

緊張感をだな……。緩急を失敗してるのよ。あと、緑くん本当に気持ちが悪いな。

「ただ、まほろ自身は悪くないんだ。だけど、昔からまほろは誘引体質で。まだお前はまほろと付き合い始めて日が浅い。だからまだ何も起こっていないと思う。でも、頼むから気をつけてくれ。と言いたかったんだ。まほろが引き寄せる事件は、大事なものも、大したことないものも様々だが、とにかく巻き込まれるのは、本人じゃなくてまほろの周りにいる人たちだ。実際、まほろには前にも付き合っている人はいたが、まほろ自身の問題ではなくて、まほろと一緒にいるだけで色んなことが起こって疲れるからという理由で何回も別れ話を切り出されている––––」

緑が頭を下げた。

急に話動いたな。というか大きく出たな。その事件とやらが思いつかなくてボツになったんですよね。最初から強引に持って行きすぎです。悪い癖が出ている気がする。

「お願いだから、まほろを守ってやってくれ。俺もできる限りのことはするから。今までは、事件に巻き込まれるのは俺の役目だった。俺が動き回って、まほろの人間関係なんかも守ってきた。俺はまほろの兄だから。でも––––」

聞けば聞くほどやばい人ですねこの人。

まほろを守るのは兄だけでなく、彼氏の役目だから。と緑は言った。

そこは弁えるんかい、と思いますし、多分私が枝田くんだったら普通に投げ出したくなっちゃいますね。「ええ、何こいつ怖……近寄らんとこ……」ってなるでしょこれは。そうならない理由が少し弱いですね。もっと、まほろちゃんがとびきり可愛いだとか、そういうものでいいので、緑くんの変態さ加減をしてもまほろちゃんと付き合うメリットが上回るのはなぜなのか、説明が必要だと思います。

でもまあ、ずっと見ている限り枝田くんは「僕は人とは違う」「非日常に憧れる」などの気持ちを持った典型的な厨二病患者という感じがしますし、緑くんの話を聞いてまほろちゃんを一層神聖視してしまった節もあるかもしれませんね。というか、なんでこんな中身ペラッペラ男が可愛いらしいまほろちゃんと付き合えたんですか?

自分の作ったキャラクターだからいくらでも悪口言えちゃうな。

これが、僕と緑との出会いであって、これがきっかけで僕は緑とよく会うようになった。正直、緑の言うまほろの誘引体質についてはこのときはまだ半信半疑だったし、唐突すぎて対応には困った。けれど、だからと言ってまほろへの思いは特に変わらなかった。
それから僕と緑はしばらく話し込んで、今までにまほろが引き寄せてきた事件と、その事件を穏便に解決するため、いかに緑が奔走してきたかの話を聞いた。なかなかにエクストリームだった。もし、緑から聞いたような事件が本当に僕の周りで起こり始めるのなら、僕の日常は一体どこへ向かおうとしているのだろうか。

感想が薄いだろ。「僕の日常は一体どこへ向かおうとしているのだろうか」じゃあないんですよ、わくわくが抑えられてないよお前はよ。

「お前を最初見たとき、お前なら大丈夫そうだな、と思った。何が起こっても、それを普通のことにしてしまいそうな、そんな雰囲気を感じた。はっきり言って鈍そう」

「ばかにされてるのかな」

「褒めてるんだよ」

僕の大学生活は、ここでひとつの転機を迎えた。2回生の5月だった。僕は、これから待ち受けていた宝物のような毎日を、書き留めておこうと思い立った。多分、書き始めはこの日でよかったはずだ。緑と出会い、まほろの誘引体質のことを知った日。どこにでもありそうで、どこにもない僕の日常は、ここから始まった。

日常が云々と言っているともう全部嘘に聞こえますね。こいつ、絶対わくわくしてるんだぜ。話しながら小躍りしてるだろ。登場人物が全員薄っぺらすぎて、ストーリーの役割としか動いておらず、自我を一切持っていない気がします。数年前に書いた文章にこれだけケチを付けられるようになっただけまだマシということなのでしょうか。

いかがでしたか? 「俺たちは何を見せられているんだ」とお思いのことだと思います。知るかボケ。最後まで読んでしまった時点で貴方も負けです。泥仕合です。未完文芸サークルの方も、初っ端からこういった文章が送られてくるのはかなり可哀想だなという感じがしますね。しかし、未完の作品をこのような形で人目に晒すというのが、どこまで行っても醜い行為になることは仕方がありません。その醜さを私たちは受け入れなければならない。

未完のまま終わってしまった文章にはその数だけエピソードがあるのでしょうが、その大半が泥臭いものだと思います。もしかすると、文章もエピソードも美しく、未完であることで既に完成している話もこの世にはあるのかもしれません。それらは、この媒体にはむしろそぐわないのではないかと思います。それは、完成していることに変わりはないからです。

今回暗い場所から引きずり出してきた、このタイトルすら付けてもらえなかった出来損ないの文章は、こうやって自意識を自意識で以て殺すことで完成しました(要検証)。こうする以外になかったのか、という気もしますが、完全に忘れ去られていた文章が再び目を向けられ、作者によって内省され、他者へと共有されるというのは、いい取り組みだと思います。あくまで個人的な考えであり、私の考えが設立されて間もないサークルの方針に影響してしまうことは望んでいませんが。それでも、文章を書く私たちは時にこうやって自ら産み落としたものを殺して、まだ見ぬ作品のための肥やしにしていかなければいけませんね、と思います。

テキトーなことを言う癖も直したほうがいいですね。この一連の文章を通して私が伝えたいことは何もありません。何も考えずに手を滑らせて文字列を生成しました。くれぐれもこの文章から何かを得ようとしませんよう。お互いに時間を浪費し合ったことをただただ笑いましょう。ありがとうございました。

 

 

考察

 

圧倒的なパワーから繰り出される、大量のユーモアあふれるコメントと共に投稿していただきました。作品そのものについてはこれ以上何を語っても蛇足になってしまいそうです。

ということで、今回の考察では本文から少し離れて、この文章から感じ取れる「熱」について考えていきます。

 

過去に熱心になって書いた文章を読んで、自分であきれてしまうことがあります。

普通、文章を今まさに書いている、というとき、人間の視野というものはせいぜい前後2,3行分です。その視野の中で構成を立てようとすると、全体のバランスやキャラクターの印象などを考えることはできません。そうしていつの間にか「登場人物が全員薄っぺら」く、展開が「最初から強引」な小説が出来上がっています。

あとになって見返してみて、どうして冷静に書けなかったのだろう、この時は熱に浮かされていたのだろうか、と、ため息をつきながらゴミ箱に入れた経験。皆さんにもありませんか?

こういった流れが夜遅くに頻発することから、その時のテンションのことを俗に深夜テンションと言って笑い話にしたりもするのですが、ここで一度立ち止まって考えてみる、ということは多くの場合おろそかになっています。

 

熱に浮かされている、というときの「熱」というのは、いったい何を指しているのでしょうか。そのヒントがタピ吸いさんの文章から読み取れます。

「ふわっとしたイメージ」で書かれた大学生活。「西〇維新を意識してそう」な文体。これらはおそらく、狙って生まれたものではありません。

確かにあとから見れば本人が書いた突っ込みどころのある文章なのですが、それは、言語化することによって生まれた違和感であり、それが言葉になる前は、もっとあいまいな、ドロドロの状態で頭の中に格納されていたはずであり、それらには「ふわっとしたイメージ」などのラベルは張られていなかったはずです。

そのドロドロこそが「熱」ではないでしょうか。「今自分は何に従って書いているのか」など、言葉になっていないからわかりようがないですし、今まさに書いている人の視野で、自分の頭の中の客観視などできるはずがありません。

つまり、熱に浮かされている、とは、何も書いていない状態(もしくは客観視したうえで書いている状態)の人から見て、狭まった視野で考えながら違和感のある文章を書いている、という状態のことなのでしょう。

 

過去を振り返ってみて、あるいはほかの人の失敗作を見て、「熱に浮かされているな」、という感想を持つことは、必ずしも今の自分がその人の能力を上回っていることを指すわけではありません。客観視を忘れていきなり書き始めてしまえば、いくら深夜テンションをバカにしていようが、熱は平等に、人の頭を浮かします。熱は、いつでもあなたを見ています。

 

第1回からすばらしい作品でした。未完に終わった作品について振り返るというのは、やはりそれだけで価値のある事のようです。

くれぐれもこの文章から何かを得ようとしませんよう。お互いに時間を浪費し合ったことをただただ笑いましょう。

いえいえ。ご謙遜を。